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掛け軸の掛け方について
掛け軸は、もちろんコレクション的な楽しみ方もあるのですが、もともと掛けて楽しむためのものですから、床などに掛けて楽しむのが本道だと考えます。そこで、ここでは掛け軸の掛け方について述べてみたいと思います。
まず、掛け軸を掛けるにあたって、最終的には見栄え良く掛けるという事を目指します。それでは、手順を見て参りましょう。
まず軸箱から掛け軸を取り出した後、巻緒を解いていきます。畳の上など水平で平らな場所に広げて、巻緒を掛け軸本体に沿わせ、風帯の癖を直します。矢筈をどちらかの手に持って、反対の手で掛け軸の中央を持って立ち上がります。そして、そのまま掛け釘に掛緒に掛けます。
次に、矢筈を置いて両手で軸先を持ち、静かに下ろしていきます。巻き癖が強くついている様であれば、丁寧に直しながら下ろしていきます。くれぐれも、掛け軸を傷めない様に、巻き癖の直しは丁寧に軽くに止める様に心がけましょう。
掛け軸の見栄えが素晴らしいからといって、一度掛けたら掛けっぱなしというのは一番好ましくありません。何ヶ月も(場合によっては1年以上も)掛けっぱなしにしてしまうと、掛け軸を劣化させてしまう事になるのです。
また、掛けて楽しんでいる間は、常にほこりなどの付着状況を確認し、汚れている様であれば、毛のほうきなどでほこりを払う様にしたいものです。
更に、掛け軸を掛けている間は、温度や湿度にも注意しなければなりません。湿度が高すぎても、乾燥し過ぎていても、どちらも掛け軸にとって良くありません。もちろん気温も高すぎても低すぎても好ましくありません。最近はほとんどの部屋で、エアコンによる温湿度管理がなされていると思われますが、エアコンを使うと思わぬ高温低温や高湿度低湿度な状態になりますから、注意が必要です。
特に、掛けている間に、乾燥による折れが入ってしまわないように気をつけなければなりません。また、万が一掛けている最中に落下させてしまった場合に備えて、掛け軸の下には何も置かないようにしましょう。よく、掛け軸下に壺などの陶器を合わせて飾っている様子を拝見しますが、これは避けた方が無難です。もちろん、落下させてしまった場合には、掛け軸にも損傷が及ぶ事がほとんどですから、そもそも落とさないようにしっかりと掛ける事が基本となります。
掛け軸を掛けた時の見栄えは、周囲とのバランスによっても大きく違いが出てきます。床に掛けるケースが多いと思われますが、床柱に使われている樹種や樹齢、床の壁面の仕上げ(漆喰やスサなどの色や表面のテクスチャーなど)と合わせて、掛ける掛け軸の種類を選んでみるとよいでしょう。
また、一幅だけではなく、連幅といって二幅から三幅、四幅と床のサイズに合わせてたくさん掛けて楽しむのも一興だと考えます。高名な作家の作品には、連幅として描かれるものも少なくありませんから、これらを並べて掛けて、その迫力を楽しまれるとよいでしょう。
ただし、あまり時代背景の異なるものを連幅として掛けるのは好ましくないでしょう。描かれた時代や作者によって、作品の持つ迫力や経年の重みが違ってきますから、これらを一度に飾るとやや落ち着きのない見栄えとなってしまいます。
また、時代背景の分析によって表装がなされていると筈ですから、これらが異なる場合は裂地の色味や風合いも異なってきますので、チグハグな印象を与えてしまうのです。一般的には、連幅に掛ける場合は二幅から始めて、徐々に掛ける軸の数を増やしてゆくとよいでしょう。何れにしても、コレクションとの相談になりますから、時間をかけて好みの掛け軸を蒐集しつつ、色々の組み合わせで連幅を楽しむのが王道です。素敵な掛け軸をお楽しみ下さい。