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掛け軸の表装
表装とは、本紙(作品)に掛物として装飾することをいいます。ここではその作業工程のおおまかな流れを説明いたします。
1.作品の分析
作業工程としては、まず作品分析として、状態の確認や、作者の確認、時代背景や用いられた画材の分析を行います。表装にあたっては、ほとんどの軸において痛みの補修が必要になってきます。どの様な方針で補修するかを決定し、適切な材料を用いるためにも、この様な分析が必要になるのです。2.色止め
特殊な薬品により絵の具や墨の色褪せや変色を停止させます。この工程によって、掛け軸の絵柄を長く保つことが出来るようになります。3.剥がし(はがし)
作品の裏に貼ってある和紙などの裏打ちを剥がしていきます。表面の作品に影響を与えないように、慎重に作業を進めなければならない工程です。傷んだ裏打ちが残っていると、作品の色に影響を与えたり表面の凹凸の原因になりますので、この工程で除去しておきます。4.肌裏打ち
新しい裏打ちの和紙を糊で貼り付けていきます。この工程によって、裏打ちが新しくなり、作品の絵柄がはっきりするとともに、作品表面の凹凸が少なくなり、しっかりとした印象になります。この時には、作品分析の結果に基づいた材料を使用し、作品全体のイメージを崩さないように心がけて作業を進めます。5.折れ伏せ
折れ目がついて弱くなっている箇所を補強していきます。弱くなっている部分は、再び巻いた時に折れてしまうので、痛みが激しくなりやすいのですが、折れ伏せの工程によってこの痛みをかなりの程度防止することができます。細長く切った和紙を弱くなった箇所に慎重に貼り付けて強度を出していきます。とても手間のかかる工程となります。6.裂合わせ
作品を際立たせるための布地(この布地を裂(きれ)と呼んでいます。)を作品と合わせて選択していきます。基本的には、好みの布地でいいのですが、作品全体の色合いや、作品分析の結果や作者などの情報をもとに、適したものを選択していきます。掛け軸全体の中で、比較的面積の大きい部分となるため、作品に与える影響が大きくなりやすい作業ですので、慎重に選択するようにします。どちらかというと自分の好みよりも作品との適合を優先した方が、掛け軸全体としてバランスの取れたものに仕上がるので、好ましいと言えます。7.付け廻し
付け廻しとは、作品の周囲を布地で覆っていく作業となります。作品の端部の補強にもなるため、作品がピンとして見栄えが良くなります。この布地も、作品のイメージに与える影響が大きいですから、好みとともに慎重に選択するとよいでしょう。8.中裏打ち
掛け軸全体の裏面に和紙を貼り付ける工程の作業を進めます。この裏打ちによって、軸全体がしっかりとして、見た時の印象が格段に良くなります。9.総裏打ち
中裏打ちの上に、厚手の丈夫な和紙によって、しっかりと裏打ちしていきます。十分に糊を乗せて、しっかりと貼り付けていきます。また、貼り付け後は十分な時間をとって乾燥させます。10.乾燥作業
平滑な板に貼り付けて乾燥させます。乾燥が不十分だと、掛け軸全体にシワや折れが出たり、ふにゃふにゃとして全体の印象が弱々しいものになってしまいます。特に梅雨時など湿度の高い時期には、更に時間をかけてしっかりと乾燥させます。しかし出来れば、梅雨時などの作業は避けた方がよいでしょう。