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中国の水墨山水と日本の水墨山水の違い
中国と日本の水墨山水の違い
水墨山水の掛け軸には、中国のものと日本のものとで違いがあることをご存じでしょうか。まず、水墨山水を描くときの技法が異なります。そのため、見た目にもはっきりと違いが見てとれます。中国では輪郭線をはっきりと描くことが多いのに対し、日本では水墨の特徴である「にじみ」や「ぼかし」を活かすのが一般的です。また、薄い墨で描いた上に濃い墨をたらして描く日本独自の「たらしこみ」という技法で描かれた水墨山水は、他にはない深い味わいがあります。
なぜ「たらしこみ」技法が生まれたのか?
なぜ日本でこの「たらしこみ」という独自の技法が生まれたか、理由のひとつに水の質があります。中国の水は硬水ですが、日本の水は軟水です。軟水の方がより滑らかににじむため、繊細な「たらしこみ」をするのに適していたのです。墨の発色やにじみは、水墨山水を描く絵師たちにとって「命」とも言えます。少しでも質の良い水を求めて、絵師たちは朝露で墨を摺ったという話も残っている程、水というのは水墨山水にとって欠かすことのできないものだったのです。そして、もうひとつの理由は、日本ならではの紙、つまり和紙の存在です。和紙の丈夫さが無ければ、「たらしこみ」という技法を確立するのは困難だったに違いありません。程良く水を吸い、しかし破れにくい上質の和紙があったからこそ、水をふんだんに使い、何度も筆を重ねる「たらしこみ」の技法が生まれたのです。
水墨山水が目指す方向の違い
また、技法だけではなく、中国と日本では「水墨山水とはどうあるべきか」という方向性も異なります。中国の水墨山水は、山や河川という現実の存在を描きながらも、心の中だけに存在する究極の理想を追求することを目指しています。言わば鋭さを感じさせる中国の水墨山水に対し、日本の掛け軸に見られるそれはより柔らかで情緒を感じさせるものです。こうしたことを踏まえて、中国と日本の水墨山水の掛け軸を見比べてみると、また新たな発見があるかもしれません。
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